坂道をのぼっていく。 緩やかなカーブを過ぎて、頂上の手前で角を曲がる。 少し下りになる。 キンモクセイの生垣がきれいに手入れされている家。 そこを過ぎたら君の待つ部屋。 秋の始まりは恋の始まり。 薫りに誘われて、弛く長く。
テレビで豪邸スペシャル特集などをたまに見かけるが、どんな人たちが好んで見ているのかを知りたい。「将来こんなお家に住みたいからがんばろう!」と思える人もいるのだろうか。いや、一定数はいるのかもしれない。否定から入るのはよくない、という否定。 …
他国の方と話したことがないので完全な自己主観になるが、日本人は語呂合わせや駄洒落がかなり好きな民族だと思う。賽銭、祝儀の金額だとか、マナーの強制だとか、記念日の設定だとか。 というわけで今日8月31日は「8(や)3(さ)1(い)」で野菜の日である。普段…
法定速度をきっちり守って走っている車がいる。 もちろん何も悪いことはしていないし、その後続についてモヤモヤしてしまうこちらが悪いのも分かってはいる。 しかし、そんな車に限って、一時停止箇所を徐行で済ませたり、曲がりながらウインカーを出したり…
政党が、甘党と辛党のふたつのみしかない世の中。 国民総選挙が行われたら、どちらが政権を握りどちらが野党になってしまうだろうか。 そんなことを考えながら、残暑の太陽が照りつける屋外でタバコをふかしていた。
ある土曜日、僕は友人の主催するイベントの手伝いに港が近い町に来ていた。 イベント会場は地元の画廊兼喫茶店を貸し切り、県外からファンクミュージックを主に演奏するバンドを招聘していた。画廊というだけあって、屋内の雰囲気は厳か且つある一定の纏まり…
ここ何年かは、「夏より5月の方が暑い」なんて言われ方をしている。 実際、紫外線量は多いらしいのだ。運動会や田植え、春の始まりより抜け出た解放感から対策を疎かにしてしまうのも仕方がない。 今年も、例年言われ続けているように、全国的に暑く、30℃を…
3月にしては暖かい日曜日の午後。国道を北上して橋を渡り、すぐの交差点を右折する。細い路地を通って土手に上り、川を見下ろすと河川敷公園がある。 公園とは言っても、遊具があるわけじゃなく、小学生クラブが使うような野球のグラウンドと、簡易トイレ、…
ザーサイである。 事の発端は、同棲している彼女がパート先のスーパーマーケットから瓶詰の惣菜を持ち帰ってきたことだった。 「(賞味)期限が近いから、安くしてもらったの」とメンマやザーサイの瓶をキッチンに置き始めた。比較的保存のきく瓶詰商品が"賞味…
おろしたての靴をはいて、あの娘に会いに行こう。 外はちょっぴり寒いけど、手を繋いで少し歩こう。 お気に入りの喫茶店で、温かいコーヒーを飲もう。 天気予報では晴れだったのに、にわか雨が降った。 未来どころか数時間先の事すら誰にも分からない。
抱きしめて、眠りについた。 目が覚めたら、すり抜けて、空っぽになっていた。 あぁ、夢だったのかなぁ。 あーあ、夢だったんだな。
たっぷりと睡眠をとった土曜日の朝。昨日は早くに睡魔に襲われ、今朝は明るくなってもなかなか目が覚めず、あわや約束の時刻に遅れそうになったとこだ。 秋の清らかな空気から急に冬の寒気が差し込んできたこともあり、どうやら思った以上に身体は疲れていた…
とある週末、僕は国道を北西へと車で走っていた。天気はいいが、風が強く外にいてはかなり寒く感じる日だった。 隣県との境になる山脈へと向かう国道は、紅葉狩りを楽しもうとする客たちにより、かなり渋滞していた。色とりどりの車が織りなす列は、紅葉より…
このようなことを言われた経験のある方はいるだろうか? まあ、まずいまい。 そもそもオットセイを生で見るのは水族館しかない、というのがほとんど。その水族館に従事している方でも飼育している動物に対し、こんな行動をする場面はないだろう。 線引きが難…
青春 朱夏 白秋 玄冬 アオハルかよ アカナツかよ シロアキかよ クロフユかよ 青春と朱夏に線引きがないように、朱夏と白秋の間にも線引きはない。 緩やかに、いつのまにか知らないうちに、出来たことが出来なくなり、造ったものが壊れていく。 高く澄んだ空…
何十年も前から好きな曲がいくつかある。 たいていは聴き始めたころの匂いや感情がついてくる。 通学時のチャリ、土手に腰おろして見た夕焼け、冬の夜、徹夜明けの夏のテンションの高い朝、絶望した梅雨の暗い空。 いつの日か、その頃のラブソングやロストソ…
喫茶店に入り、アイスコーヒーを注文した。完全分煙化の店内の二階、奥の方のガラス扉を開ける。入ってすぐ脇に小さい灰皿が積み重なっていた。 コーヒーを一口すすり、煙草に火をつける。この二つの大人の嗜好品はどうしてこんなに相性がいいのだろう。 最…
つい十日ほど前まで気象予報士が「梅雨寒」という言葉を発していた。 今は太平洋高気圧が張り切りすぎているのか、連日の真夏日もとい猛暑日、そして熱帯夜。 自然と街は露出度が高くなり、今日は黒い袖なしのワンピースを二度ほど見かけた。 少し歩いただけ…
不思議なもので、付き合いが長くなればそれだけプラトニックな関係になっていく。
プライベートが充実していると、精神が安定する。 精神が安定していると、インプットされる情報量が増える。 インプットが多いほど、アウトプットしたくなっていく。 何かを生み出したりするには、まずご自愛を。
2003年の6月1日から30日まで、勝手に禁酒をしていた。 30日の夜中まで、予兆がみられなかったのでいったん帰宅した。 そのまま眠りこけてしまい、昼過ぎに急いで向かった。 ふわりと、誇りの断片のようなものが生じた気がした。 その誇りが、父性へと成長す…
紙に十字の線を引き、「上」「下」「左」「右」の漢字をそれぞれの意味する箇所に配置する。 対称の漢字を熟語にして読む。 「上下」じょうげ 「左右」さゆう 縦書きは上から下に、横書きは左から右へと読む日本語の規則にのっとっている。 同じように十字に…
自分自身の存在を自ら肯定するために、「何かしら誰かしらのために」という目的を上げることは多い。 子どものために、こういう親であるべき。 親を安心させるために、なるべく良い職に就くべき。 担任のために、良き生徒であるべき。 指導者のために、良い…
最近読んだ本の中に「記憶は時間を温める」とあった。 記憶は時間を温める、もちろんクールダウンさせることもできる。 温度を与えるという点では同じだ。 冬から春へと変化する空気のなかに、形も名前も知らない花の香りが漂う。僕の鼻はそれを感じ取り、人…
生まれてから、知識、知恵、体力、免疫力、経済力などが少しずつ増えていく。 しかし、それらはいつか喪失する。 僕らは蓄え増やし、失う。 誕生から死までをx軸としたグラフにしてみたら、それぞれのy軸のピークはどこなのだろうと考える。 学生時代で運動…
昨日は15℃くらいまで気温があり晴れていたが、今日は10℃に届かず雨が降っている。 雪の少ない今年の冬が、春との間で揺れている。 喫茶店に入り、濃い目のコーヒーを注文する。昨日ならばアイスだが、さすがに今日はホットだろう。 土に籠っていた動物が穴か…
思い出だけが増えていく。 雪道を一歩一歩、踏みしめるように。 ふと鼻をくすぐる君の残り香。
悪夢にうなされたわけではなく、ごく自然に朝の光を受けて目が覚めたはずなのに、なにか嫌な予感がした。 アラームを解除しようと枕元のスマートフォンを手に取る。メッセージが一通届いていた。 「あなたの部屋に指輪を忘れたみたいなの」 先日、成行きで部…
とあるSNSの“過去の投稿”が表示される。11月29日は「いい肉の日」の語呂合わせで、過去の自分はなんやかんや肉料理の写真を撮っていた。 今年もご多分に漏れず、昼飯に食べた肉の写真をアップロードした。 さて、翌日。 車を走らせていると、国道沿いにとん…
いつもより早く目が覚めた。カーテンを開けると空は灰色で、日ごとに冬が近づいているのがわかる。 テレビをつけると、芸能ゴシップやら法改正がどうの、流行のファッションやグルメだとかが垂れ流しされていた。ところで、「今年のトレンド」はいったいいく…