HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

春と河原と雪と君

3月にしては暖かい日曜日の午後。国道を北上して橋を渡り、すぐの交差点を右折する。細い路地を通って土手に上り、川を見下ろすと河川敷公園がある。

公園とは言っても、遊具があるわけじゃなく、小学生クラブが使うような野球のグラウンドと、簡易トイレ、軽く舗装されたランニングコースが楕円を描いているようなところだ。

空きスペースに車を停めて、川べりまでのゆるい階段を下りると、ゆったりとした流れに直接触れることができる。階段に腰を下ろし、時間が許すまでぼうっと眺めていたくなる。ここよりも数キロ上流のほうが川幅は広く見えるのだが、ここはそうでもない。対岸までほんの少しだ。案外、深みがあり、底の方は力強く流れているのかもしれない。

日曜日というだけあって、公園にはさまざまな人がいる。

グラウンドは整備中のため入ることができないが、脇でキャッチボールをしている親子がいる。ふだんはコーチの指示や、親の歓声で盛り上がっているのだろう。川べりにはワケありそうな女性が膝を抱えていて、足元の大きな石達が土と変わるあたりでは別の親子がなにやら生き物でも探しているようだった。ランニングパンツにポニーテールで揃えた、母親と娘がゆっくりとランニングコースを走っている。僕の後に駐車場に停めた車からは、サックスを抱えマウスピースを口にしたままの中年男性が降りてきた。マウスピースを咥えたままで独りごとを言っている。「なんて素晴らしい日だ」国際的に有名な、ネズミが主人公のアニメに登場する、アヒルの声にそっくりだった。

 

 

あれから二週間経ち、同じ三月の日曜日でもまったく気候が違う日、僕は街を丁字に通るアーケード街にいた。まるで冬に逆戻りしたような気温、未明から降っていた雨はみぞれに変わろうとしている。山沿いでは雪になっているのだろう。

コンビニから出て、とある商業ビルの5階で用を済ませ、駐車場へ戻ろうとしたときに、二人組の女性の片方と目が合った。こちらは少し遅れて気づいたのだが、向こうは明るく軽く挨拶をしてきた。お互いすれ違う形で、向こうには連れもいたため足を止めなかったが、一言二言交わして別れた。

街を歩いていて偶然知り合いに会う、のは幾度か経験があるが、二、三年に一度の頻度で、同じ人物に出くわすのは珍しいケースだと思っている。

こうして、学生時代に付き合っていた彼女の容姿が、アップデートされた。

数年ぶり何度目かのアップデート、そう決してデートではない。