「なあ、胡散臭いの"胡散"ってなんだ？」 『わかんねー』 「ところで、今年のクリスマスイブはどうだった？」 『掛け持ちだったな。夕方まで遊園地のヤツと、夜はホテルのヤツ』 「よく体力持つな」 『若いうちに、やれる事やっておかないとな』 「エラいな…

グラスに注いだ酒に、氷がゆっくりと融けていく。 ゆらゆらと底の方に向かって、たなびく川面のようだ。 気温が低いのにもかかわらず、何故冷たい酒を飲み、挙げ句の果てに外で夜空を仰いでしまうのか。 まぶたが少しずつ重くなってきている。そっと目を閉じ…

カーテンを開けたまま眠ってしまっていたので、眩しい陽射しに起こされた。 冷え切ったワンルームの隅で毛布に包まり、頭は割れるように痛い。 這うようにしてシンクまで移動し、蛇口をひねる。喉を鳴らしながら水を飲む。 玄関に脱ぎ散らかしたブーツを横目…

「おまえさ、今カネ幾ら持ってる？」 『六千円あるけど』 「お、結構持ってるな。ところでさ、マヤ文明の話は知ってる？」 『知らねーけど』 「メキシコら辺で栄えた文明なんだけどさ、暦を作るのが発達してて、遥か先の未来までカレンダーを作ってたんだと…

家にいても、名前を呼ばれない。 子供らからはパパと呼ばれ、家内にいたってもそうだ。 名前を呼ばれる=自分の存在意義を見いだそうとして、男は外に出る。 仕事であったり、友人の所であったり、他の所であったり。 自分を自分でいさせる為の手段として、他…

一般的に、自己紹介をする時は姓を名乗る。 ある程度、関係が親しくなれば名で呼ばれることも多い。 さん、君、ちゃん付けなんでもござれ、だ。 呼び捨てにされるのも良い。 個人的には、関係が深まれば深まるほど、名を呼び捨てにされると嬉しい。

「ライターってさ、"メラ"使えてるようなもんだよな」 『おまえ、発想が子供だな』 「でもさ、一生懸命に火打ち石とかで火をおこしてる時代に行って目の前でライター使ったら驚くだろ。"魔法使いかッ！？"なんて言われそうだろ」 『ほら、さらっと今、タイム…

“〜〜ｰｰｰバラバラバラバラバラバラッｰｰｰ” ローターが、周囲の空気をかき混ぜ、はじく音が聞こえてくる。 「板橋様、おはようございます！」 乗り込んでヘッドホンを装着するなり声が耳に届く。 『おはよう、今日もよろしく』 ヘリは飛び立ち、数分後には職場…

分かりきっていることだけど、なかなか普段は実感しないこと「人生はたった一度きり」 これまでに天文学的数字の選択肢を経て、僕たちは現在を迎えている。 はたまた、誰しもが初めて生きているので、「人生をうまく歩むためには」という気の利いたアドバイ…