HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

融氷ノクターン

グラスに注いだ酒に、氷がゆっくりと融けていく。



ゆらゆらと底の方に向かって、たなびく川面のようだ。



気温が低いのにもかかわらず、何故冷たい酒を飲み、挙げ句の果てに外で夜空を仰いでしまうのか。



まぶたが少しずつ重くなってきている。そっと目を閉じ、意味ありげに開く。目線は一点を見つめたままで。



見つめるその先に、貴方の顔が、貴方のその瞳があったなら。



今なら何も臆せずにさらけ出してしまえるのに。



今なら、言えるのに。



グラスを口元に運び、少しだけ口に含む。



口に出しそうになった言葉と一緒に、飲みこむ。



グラスにうっすら付いた口紅を、親指で拭う。



まだ、化粧を落としていなかったんだっけ?



着信ランプに期待していた自分を嘲笑う。



明日がやって来るのをこんなに拒否するなんてことが、あるのね。



宙ぶらりんの感情は、行き場を失ったまま。



綺麗な月の隣で、私を見下ろす。