最近読んだ本の中に「記憶は時間を温める」とあった。
記憶は時間を温める、もちろんクールダウンさせることもできる。
温度を与えるという点では同じだ。
冬から春へと変化する空気のなかに、形も名前も知らない花の香りが漂う。僕の鼻はそれを感じ取り、人間が決めた線引きではなく自然がもたらした線で春を迎える。
味覚や聴覚で感じ取るものより、匂いや香りのほうが記憶と結びつきやすいと何かで知った覚えがある。そしてそれは正しいことだと思う。
ふと鼻をくすぐる香り、思い出される冬と春の出会いと別れ。
時にだれかを思い出し、記憶は心までほっこりさせてくれる。