HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

2月の寒い晴れた午後に


僕は自転車を漕いでいた。

あまり土地勘のない狭い車道だ。ただ、路線バスの通行ルートにはなっているようで、バスと乗用車がすれ違うたびお互いが減速し、車の流れはスムーズではない。信号も少ないので、歩行者にとってはやや危険な交通事情だろう。

少し先に踏切が見え、遮断機が降りている。僕の自転車より先行していた車たちは次々減速している。

僕の通っている道路を渡るように、手前に横断歩道があった。自転車が横断する隙をうかがっている。僕は後方を確認し、後続の車がいなかったので漕いでいたペダルを止めた。横断歩道のやや手前で停止する。

自転車に乗っていたのは4歳くらいの男の子を乗せた母親で、僕が道を譲ったのに気づくと会釈しながら道路を横断した。

後ろに乗っていた男の子が僕に向かってバイバイをしてきた。

ただ、僕はマフラーを鼻の上まで覆うように巻いていたし、両手は防風用のハンドルに付けるグローブの中でブレーキを握っていた。

だから、目だけで精いっぱい笑って返事をした。

男の子が僕の表情を笑顔と感じてくれたかは分からないけれど。




こんなことがあった時、僕は無性に君に会いたくなる。

他愛もない会話の途中で今日あった出来事を思い出し、口と鼻を手のひらで覆って目だけで笑ってみせる。

君は僕の笑顔に気づくだろうか?それともただ訝しむだけだろうか。

僕は自転車で道を譲ったこととその男の子のことを話す。

君は相槌を打ちながら笑い、少しだけ僕を褒めてくれるだろう。




2月の寒い晴れた午後に、僕はそんな想像をしながら自転車を漕いでいた。