快晴。
僕は友人数人と、海水浴に来ていた。
手漕ぎのボートを借り、何人かで漕いで行く。
玉粒のような汗が、太陽に反射しては蒸発し、息を切らしながらも心地よい疲れだった。
手漕ぎボートは、いつのまにかカヌーにエンジンが装備されたようなジェットスキーに変化していた。
先ほどまでとは違い、アクセルを捻れば快適なスピードが出る。
沖へ向かい、なだらかな海面を疾走する。
一通り堪能したので、Uターンして浜へ戻る。
が、いっこうに砂浜は見えない。
来た時と同じくらいの時間、スピードは出したはずだった。
が、砂浜はおろか、陸すら見えない。
Uターン時の角度を間違ったのか?
自分の中では180度のつもりでも、もしかしたらちょっぴり角度を間違ったのかもしれない。
コンパスを確認するも、出発した時は浮かれていて見ていなかった。
進んだ方角、戻るべき方角がわからない。
鼓動が速くなる。
まわりは360度、水平線が拡がるパノラマ。
やみくもに進んだら取り返しがつかなくなるかもしれない。
その一瞬、船体が大きくバウンドした。
さっきまで蒼く穏やかだった海が、茶色味をおびて濁っている。
濁っているだけではない。
白波が立ち、大きくうねっている。
船首を波にたて、何度かやりすごす。
鼓動はどんどん速くなり、息づかいも荒くなっていく。
波はいろんな角度から迫ってくる。
高さもどんどん高くなっていく。
青い空と蒼い海が、
灰色と茶色にそれぞれ濁っている。
ついに、連続した波にバランスを崩され、僕は海に放り出された。
鼓動が一瞬、止まる。
幸いにも海面に顔を出すことができた。
数メートル先に、ジェットカヌーが船底を見せてゆらゆら浮かんでいる。
ひとまずそこまで泳ぎ着いても、
ひっくり返して乗ることはできるのだろうか。
途方に暮れながらぼんやりと考えていた。