夢の中で、あの娘とメールのやりとりをしていたんだ。
他愛のないやりとりだったけど。
妙に気持ちが穏やかで、
空の青が鮮やかなのはきっとそのせいだろう。
もしかしたら、と思ってフォルダを開いてみたんだ。
でもやっぱり夢だった。
駅までの道のりを、
小一時間かけて歩く。
風が強く、
雲の輪郭がクッキリとしている。
涙は流れそうで流れない。
やはり、もう秋なんだな。
肉体なんて、他人とコミュニケーションをとるためにしか必要ない。
この意識の集合体さえあれば、僕は生きている。
怖いのは、忘れられてしまうこと。
もしもこの身体が使い物にならなくなって、
戸籍上から消えてしまったとしたら、
「忘れないで」って言葉すら伝えられないのか。
秋の高い空に、
意識だけ吸い上げられそうになって、
自分のこの両手で縋り、引き戻す。
ファインダーごしに切り取った空はこの目で見たそれとはどこか食い違っていて、
ボタンを操作して消した。