HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

美化された記憶

毎夜悪夢続きだった彼は、また夢をみる。



全体的に白を基調とした世界、日常よりちょっとだけ余裕のある自分がそこにいる。



離れ離れになってしまった元恋人が現れる。


彼女はまだ、自分のことを好いていてくれているようだ。


彼女が彼の手をにぎろうと手を伸ばし、指先が触れる。


彼はとっさに手を振りほどいてしまう。もう僕たちは恋人同士ではないという建前が頭をよぎったからだ。


彼女はちょっとだけ淋しさを滲ませたはにかみの笑顔のまま、彼の横を歩く。


ふたり並んで、あてのない散歩のように。


僕もまた、彼女のことを好きなままのようだ。





朝、目が覚めると彼は「これが美化された記憶ってやつか」とひとりごちて、夢の中だけでも手を繋いでおけばよかった、と悔いる。