"死体は冷たくて硬い"ということを知っている。
だがそれは"死後硬直"の知識を持っているだけで、
自分のこの指先で、触れた感覚として知っているわけではなかった。
死を知るずっと前から死は怖い。
我慢している事を無意味と考えてしまう。
安い食事で済ませて貯金につぎこんだり、
健康診断を控えてるから断酒してみたり、
今日やりたい事を明日にまわしてみたり。
しかしふと思ってしまう瞬間があるにはある。
一体こんなに我慢してどうなるって言うんだ?
煙草を吸っている身で被爆発癌率がどうとか、
ちゃんちゃらオカシイ話だと思われるだろう?
明日死んでしまったらもうそれでオシマイだ。
アレしたかったコレすりゃ良かったなんてさ、
いまわの際にそんな事考えたくないじゃない。
やりたい事やっておいた方がトクな気がする。
それでも、
どこか未来を信じている自分がいる。
たとえ明日死んでしまったとしても、
それは今はまだ決定した事じゃない。
雨の日も悲しい話も辛いニュースも、
そればっかりじゃイヤになるんだよ。
できれば絶えず笑って幸せでいたい、
いずれやってくる最期のその時まで。
幸せとは何か、人生とは何か考え始めると、宇宙の果てを想像するのと同じくらいアタマの中が混沌としていく。
今までに結論がでた試しはない。
そういう時は、「結論なんてわかったら人生つまらないしな」と納得させる事にしている。