『誰かに必要とされること、求められること、それが自分の存在意義を明確に照らし出し、
なんて幸せなんだろうと思う。
きっと母親がお腹に手を当てて、僕が撫でられていた頃からそれは始まっていた。
生まれた時はハダカだったから、生きるに連れて色んなものを肌に纏ってきた。
そのせいか齢を重ねるたび不感症になっていく。
その中で自分の存在意義を感じ取り、幸福を感じ取り、生きている実感を掴み取れる。
僕もそういう風に誰かに何かをあげられたなら。
「ありがとう」と
「貴方を想う」は
似ている。
感情の真ん中に愛がある。
thank you,I think you.
綴りの真ん中に僕がいる。』
そこまで読み返して栞を挿み、本を閉じた。
ありふれたラブソングのような文章だが、主人公である"僕"もきっと「絶望のあとにやってくる覚悟」を知っているんだろう。
身近な人の死をもって「人生は一度きりだ」という事を改めて実感し、「後悔しないように生きていきたい」と強く願う。
大人になるに連れ、それは簡単な事ではなくなっていくけれど。
自分の明日を迎えるように、再び本を開き、ページをめくる。