天国に連れて行かれるくらいなら、天使の迎えなどいらない。
地獄がどれだけ辛いのか、全く未知であるのと同じように、天国で生きることが本当に幸せなのかもわからない。
幸せに慣れるとは退屈の始まりかもしれないじゃないか。
僕はまだこの世界を離れたくはない。
君が生きているこの世界を。
会えない日々がより惹き付ける、そんな途中でこの世界からいなくなるなど考えられない。
夢の中で僕はそう主張していた。
誰に向かって、とは分からない。
ギゴッ!と物音がして目を開くと、横転したバスの窓をこじ開けて、レスキュー隊員が手を差し伸べてくれているのが見えた。
良かった、あのオレンジ色の服は天使じゃない。
運転手は無事なのだろうか。
元はといえば、彼がこの事故の原因とも言えなくはない。しかし、たまたま僕以外に客がおらず、はたまた彼の話に聞き入ってしまった僕も、もしかしたらこの事故の因子の一つなのだろうか。
「そういう運命だった」と片付けてしまうのだろうか。
不自由な腰を庇ったせいか、今度は右腕に激痛が走った。
わずか2ヶ月ぶりという短い月日を経て、僕は再びストレッチャーに載せられた。
今度の病院は、看護師の服が(天使を想像させる)白じゃないといいな。
なんだかんだ言って、運転手の言い分が頭から離れない。
薄いピンクがいい。
水色はちょっと冷たい感じがする。
できればパンツスタイルじゃなく、スカートで。
できれば若くて可愛いナースが多い病棟だといいのだけれど。
そう思いながら僕はまた、君の顔を思い出す。