HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

もうそうどうそう

今年の盆は実家に帰省した。普段は特に何かない限りは連絡を取らない方だったが、数か月前に母親から「同窓会のハガキ来てるよ」とメールがあった。

何年も地元に帰ってなかったことだし、まあ良い機会なのかもしれない。

クローゼットの奥にある段ボール箱を引っ張り出し、何冊かの文集とアルバムを眺めていた。

子どものころの"将来の夢"というのは、望む職業ではなく何かヒロイズムを目指している。消防士、パイロット、占い師、ケーキ屋さん、教師、野球選手、サッカー選手etc、etc。

飛行機と列車を乗り継ぎ、実家最寄りの駅からバスに乗った。路線自体はほとんど変わっていないはずなのに、目に入る街並みや風景は記憶の中のものと全く違っていた。「変わらねえな、この辺も」などというセリフを心に用意していたのだが、言葉にすることはなさそうだ。

到着するなり墓参を急かされ、父の運転する車に乗り込んだ。天気は良好。「昔はこんなに暑くなることなんてなかったのにな」「やはり温暖化か」「世界中がこうなのかな」「そういえば○○さんのとこ、お孫さん三人目ですって」とりとめのない会話が車内を行き来する。ちなみに○○、というのは地元に残っている数少ない級友の名字であり、母親のこの言葉は暗に未だ未婚の僕に対するプレッシャーなのかもしれないが、スルーする。

夜になり、Tシャツにハーフパンツ、スニーカー、財布や携帯を入れた小さなリュックサックという格好で家を出た。子どものころからただ単純にサイズアップしたような出で立ちだ。地元にもあるチェーン居酒屋の二階の広間が貸切になっていた。ふすまを開けると宴はすでに始まっていたようだ。「おお〜!××!」「久しぶり!」「いまどこに住んでんの?」「仕事何してんの?」「結婚は?」といった挨拶なのか詰問なのかカテゴライズできない会話のボールが飛んでくる。

ひととおりのキャッチボールをいなし、座布団に腰を下ろす。目の前のコップを手に取ると向かいからビール瓶が傾けられた。

「覚えてる?」

もちろんだ。事前予習として開いた文集もアルバムも、結局この子の部分だけを読み直した復習でしかなかった。

「覚えてるよ」誕生日とか血液型、ほぼ何もかも。

注がれたビールをいったんテーブルに置き、瓶を受け取る。返杯を注いだ。

小さな乾杯をしてお互いの近況話しに花が咲いた。彼女は資格を取って気象予報士になったらしい。もしかするとローカルテレビ番組から天気予報コーナーのレギュラー出演オファーがあるかもしれないそうだ。占い師になりたいと書いてあった文集の一頁を思い出す。天気予報はもっとも身近な未来予知だ、彼女の夢は叶っているように思えた。