以前に交際していたことのある女が、もうすぐ死んでしまうらしい、と聞いた。
なんでも、寿命の設定を過去に間違っていたらしく、薄めて延ばしてしまっていた分をリセットすると神様が勅令を出したそうだ。
なんとも理不尽な話だが、誰も信じて疑わなかった。というわけで現在シングルマザーの彼女は子供たちを連れて実家へ帰ってきている。
僕は共通の友人とともに彼女のもとへ向かった。
「何月何日にあなたは死にます」という確定事項を宣告されて、どんな気持ちになるのか想像だにできなかった。しかも一日は二十四時間ある。少しずつ息ができなくなって徐々に死へ近づくのか、スイッチがパチンと切れてしまったように最期を迎えるのかもわからない。
彼女自身も、付き合っていた当時良くしてくれた親御さんたちも、どんな気持ちなのだろう。
そして僕が会いに行って何がどうなるのか。
暗い部屋の畳に座り、僕は「吐き気がしてきた」と涙目ながらに友人に言う。