夢の中では、造りの粗末な映画のように場面が急展開することが多くある。
僕は酔っぱらって、スマートフォンの無料通話アプリから彼女に電話をかけていた。
「はいもしもし、あれ?別の人の名前になってる。これどうやって直すんだっけ」
『もう飲んでる?迎えをお願いしたいんだ』
「あームリ。これから仕事になるかもしれないし」
通話は終わる。もしかすると、通話自体も本当だったか定かではない。なぜなら、夢の中だからだ。
場面は急に切り替わり、僕は見たことのないホテルの入り口にいた。すると、彼女が出勤のためか門扉をくぐっていく。
露出の高い服装だった。
たしか、今はシングルマザーで小学生の子供が二人いる。
子どもたちも年頃だろう、まさか風俗的な仕事はすまい。しかし、今の僕にそれを確かめる術はない。
もう彼女の物語に僕は干渉できない。映画のスクリーンを眺めるように、目と耳で情報を得るだけだ。たとえ僕が切なさでギュッとえぐられるような心の痛みを覚えたとしても、なにもできやしない。
僕たちはそれぞれ長さや太さの異なる糸、彼女とは少しの時間だけ絡まっていただけなのだから。