HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

気になる映画は独りでも行きたいが感想を語り合うことはできないというジレンマ

ファミリーレストランにて】
午前に一つ用事を終えたので早めにランチを済ませてしまおうかと決まったところだ。
手ごねハンバーグのセットをたのむ。今日のスープは溶き卵のコンソメスープらしい。
寸胴の底の方から一度混ぜなるべく多く具を掬おうとするが、これがなかなか難しい。
席へ戻り、ほぼ具のないスープをすすりながらメインが運ばれてくるのを待っていた。
店内は平日の昼飯時前にも関わらず、同じような人々で席の六割ほどが埋まっている。

僕がいる席の通路をはさんだ向こうに、学生と思しき若い男女が新たに入店してきた。
何かに興奮しているのか、席へ着くなり始まった会話の声はやや大きく、口調も早い。
会話は僕のところまでほぼ丸聞こえで、ときおり知った名前の俳優や女優が出てくる。
その時、花を挿した水差しに水を満たすように、僕の身体に気まずさが満ちていった。
話題は僕が来週観る予定の映画の内容であり、ラストのネタバレを今にも言いそうだ。
「原作とは違う大どんでん返し!」とのコピーで、来週を楽しみにしてるというのに。


【こんな場面に直面した時の選択肢】
A:ウォークマンなどの音楽再生機器のイヤフォンを耳にねじ込み、会話を遮断する。
B:スープバーへ行くついでに、店員に禁煙席から喫煙席へと移動したい旨を伝える。
C:スープバーへ行くついでに店員に事情を話し上手く彼らの席の移動をお願いする。
D:タイミングよく店員がやってきて、注文を取りつつ会話を遮ってくれるのを待つ。
E:“大”をもよおしたフリをしてトイレへ行き、便座に腰かけて時が流れるのを待つ。
F:彼らの席へ行って訝しげな視線を受けつつも正直に事情を話し会話を中断させる。

Aが一番ポピュラーな手段なのだがあいにく僕はその手の機器を持ち合わせていない。
Bは誰も傷つけないが、タバコを吸わない僕にとっては食事中に鼻をつく煙がイヤだ。
Cは気の利く店員がさりげない感じで行動してくれればいいのだが、ミスると大変だ。
Dはギャンブル性が強すぎるし少しでも遅れれば僕は映画の結末を聞かされてしまう。
Eは消極的すぎるし席を離れている間に料理が運ばれてきて冷めちゃうかもしれない。
と僕が黙々と逡巡している間に、一緒にいた彼女がFをこともなげにやってしまった。