HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

a summer travel

僕は「短期集中型だね」と言われることが多い。もちろんそれは自覚している。学生時代のアルバイトは長期休暇中だけだったりとか、試験前は徹夜一歩手前までやったりとか。飽きやすいとか熱しやすく冷めやすいとか集中力の持続が短いとかマイナスなイメージも持たれてるかもしれないけど。

今年の夏は、民宿での接客アルバイトをすることになった。リゾート避暑地に数組が同泊するペンションタイプで、オーナーさんが夏季や冬季の長期休暇のみオープンさせている。そこに泊まりこみで10日〜2週間ほど行くわけだ。

アルバイト初日は8月に入ってからなので、僕は数日前に到着するよう旅行もかねて出発することにした。働き始めたらそのほとんどをペンション館内で過ごすのだろうし、事前に周囲の観光情報を得ておいて接客に活かせたりできれば、という考えもある。青春18きっぷで鈍行を乗り継ぐ。食費や交通費、宿泊費などは春休みに引っ越しのバイトで貯めていたお金を使う。

窓から見える風景は、コンクリートやセメントの人工的グレーから木々の深緑や眩しいほどの空の青へその割合を増していく。

比較的近めの観光スポットへ向かう。駅前からバスに乗る。都会とは空気の質も時間の流れ方も違う。青い空に映える山の稜線を眺めながら、冬に来ても楽しめそうだなんて思ったりする。


ユースホステルに泊まりながら観光地を一通り見つつ日が過ぎる。


アルバイト初日、ペンションへは時間に余裕を持って歩きながら向かった。近場の土地勘も少しは押えておきたかった。
到着すると、オーナーさんとその奥さんが迎えてくれた。「早かったですね、道中迷いませんでした?」と奥さんが気遣ってくれる。「トラベルにトラブルはつきものだからな」とオーナーさんは豪快に笑いながら言った。「あともう一人来ることになってるから、仕事の内容の説明はそろってからにするよ」と、ひとまず僕が住み込みする部屋に案内された。「ゆっくりしててくれ、仕事が始まっちまえばこんな余裕はなくなるけどな」とオーナーは豪快に僕の肩を叩く。それが「よろしくたのむよ」というメッセージにとれたのはオーナーの性格が表れてるからなのかもしれない。

少しすると、天気が急変し雨が降りだした。山の上に見えていた入道雲のせいだろう。それからしばらくして、玄関のほうから「遅れてしまって申し訳ありません!!」という声が聞こえた。”もう一人”が来たのだと僕も玄関に向かう。オーナーと奥さんはもう出迎えていて、奥さんはバスタオルを渡しながら「あらあら、大変だったわね」と気遣いをみせている。濡れた髪と顔を拭き終わった"もう一人"は女性だった。オーナーは「トラベルにトラブルはつきものだからな」とさっき僕に言ったのと同じことを言っている。彼女はレッサーパンダプレーリードッグのような屈託のない笑顔でそれに応えていた。

「じゃあ仕事の説明を始めよう。こちらが先に到着していたA君。A君、一緒に働いてもらうBさんだ」オーナーは僕たちを紹介した。
「よろしくお願いします、Aです」と僕はあいさつをする。
「Bと言います、こちらこそよろしくお願いします」とハキハキ彼女は言う。


ドキリ、とする。


人懐っこい笑顔に、
ひと夏の恋の予感。