その年の夏の終わりは突然だった。
猛暑日と真夏日が連続していた8月の下旬、雨降りの日が2日ほど続いた。雨があがると、湿度は雨で清算されたように蒸し暑さは消え、文字通り空気が変わった。
昼間はまだ蝉の鳴き声がするが、夜は蛙の代わりに秋の虫たちが鳴きはじめている。
夏の終わりと初秋の、ちょうど中間地点のような晴れた日に、僕たちは再会した。
遅めのランチにあわせて待ち合わせをした。いくつかのメニューの中からパスタを選び他愛もない会話をしながらゆっくりと食事をした。
腹ごなしに河原の遊歩道を散歩する。立ち生える木々の緑に陽射しが映える。その緑は夏の濃いものではなく初春のようなやわらかさがあったけれど、新緑の若々しさとは違った。
手をつなぎながらゆっくりと歩く。時間はふんわりと過ぎ、乾いた風が時折僕たちの頬をなぜた。
木陰の石に腰を下ろし、川面でポチャン、と跳ねる魚を眺めていた。
太陽は西に少しずつ傾き、その中で僕たちは唇が触れるだけのキスをする。
彼女はバスに乗り、僕は自転車に跨り、夕暮れは黄昏に変わる。