HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

Over the cloud,Under the cloud.

『あなたの夢の中に、わたしはいる?』
カランコロン、とストローでグラスをゆっくりかき混ぜながら、彼女は聞いてきた。





「夢」と聞いて僕は反射的に、今朝見た夢を思い出した。


知らない街を、何かに追いかけられながら逃げ惑っている。
速く走らなきゃ、という意識とは反対に、ひどく足が重い、遅い。
まるでスローモーションでこのままでは瞬く間に捕まってしまう。
でも幾ら焦っていても、スピードがあがることは無い。そしていずれ追いつかれ、捕まえる手がすぐそこまで伸びてくる。

もしかしたら君も見たことがあるかもしれない。
「イヤな夢を見たよ」にカテゴライズされる夢を、僕は思い出していた。





彼女は左手で頬杖をつきながら僕を見ている。



「夢に"いる"?」って言葉がふとひっかかった。

夢は夢でも、もしかすると過去に見た夢ではなく、未来を指す夢のことか。



僕は慌てて、思い返していた今朝の夢を意識の外へ追いやった。








が、彼女はそれすら見透かした瞳でずっとこっちを見ている。


ユリの花のタトゥーを入れたの、と少し前に言っていた。


僕はまだ見ていない。







先のことなんてわかりっこないしなぁ、とか、
体(てい)のいい言葉だけでも言っといた方がいいのかな、とか、

色々考えがよぎっては消え、また巡り、テラスの外に目をやる。





さっきまで降っていた雨も止んで、雲の合間に青い空がみえてきた。
陽射しが葉を濡らしている水滴にキラキラ反射している。




実際、梅雨はもう明けたんじゃないだろうか。







気象庁を脅迫してでも「梅雨明け宣言」をさせれば、陰鬱とした人々の気持ちも少しは晴れるかもしれないのにな』


僕が発した言葉はなぜかそれだった。




彼女は微笑を浮かべながら、頬杖をついている手を替え、もう片方の手でストローを口元に近づけた。






たぶん、自分でした質問の答えをすでに彼女は知っている。




水溜まりにも、陽射しが眩しい。
聴こえてくるのは、雨上がりに似合うミュージック。