郊外のショッピングモール、その三階のトイレに今僕はいる。フードコートで食事をした後、胃に収めた分だけ体外へ押し出すように便意を催したからだ。
映画を見て、なんとなく入った店でセーターを買った。
幾日か過ぎて、みぞれまじりの雨が降っている朝に僕は新しいセーターを着て出かけることにした。身長にあわせてサイズを選んだのだけど、ここ数年の流行りなのか身幅はタイトめだった。洗面所の鏡を見ると、体型そのままにフィットしていたため上から何かを羽織らなければと思った。
いつだったか、他愛もない会話の中で服の試着のことが話題になっていた。僕は試着室にはズボンの裾上げを頼む時しか入らない派だった。が、相手はたとえ買わなくても試着してみるタイプだった。
今朝出かける前の僕の動きの逡巡は、試着室で結果が分かっていたことだったのかもしれない。けれど冬場に何枚も服を脱いだりという面倒なことは極力やりたくないのも実情だ。