HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

いろはの日の夢の話

これから数人で飲みに行こう、と広瀬通りを移動していたはずだが、僕はおもむろに長机を組み立てた。そしてその上にコンタクトレンズのケースを20ばかり並べ、一つ一つに洗浄液を満たしていった。途中、酒臭い息をしたおっさんが「物販か!物販はいいよな、温かいもの」と意味不明な言葉で羨ましがっていた。

「出来たぞ!」と僕は言い、長机を両手で抱え込むようにしながら移動を再開した。が、当然バランスを崩した天板からはコンタクトレンズのケースが散乱しバラバラと落ちた。「あー、言わんこっちゃない」とばかりに友人たちは拾ってくれた。そのあと、僕たちは何もなかったかのようにまた歩きはじめた。

交差点で左に折れると、道の反対側に目的の店があった。道は跨線橋のように山なりになっていて、歩道と車道の間には高めのガードレールのような柵がある。道路を横断するには先の信号まで行かなければいけないようだった。が、友人のうち二人ほどは跨線橋の手前で道路の下を抜ける小さなトンネルへ歩いていた。「そんな道があるなら声かけてよ」と思いつつ、先の信号まで歩くか、トンネルまで引き返すか迷う。あからさまに来た道を引き返した方が距離が短かったので、逡巡は瞬時に解決した。

トンネルをくぐればすぐに店の入り口があり、タル材で出来ている扉を開け、僕たちは店の中へ入る。

入口すぐには知人が何人か飲んでいて、さらに進むとトイレ、バーカウンターが横状のフロアに並んでいる。

バーカウンターにはこの店で最近働き始めたバンドマンがいて、「ひさしぶり」と声をかけながらドリンクメニューリストを手にする。

カウンターには一人先客がいて、一つ年上の先輩なのだが「これいいよ」と言って奇妙な形のグラスを勧めてきた。

厚めの透明なガラスの材質で、グラスのようだが円柱と角柱のあいだのような丸みと平たさがあった。飲み口には小さなビン先のような注ぎ口がついている。たとえば、ベランダの手すりに肘をかけたときにちょうど飲み口が口元にくるような感じだった。なのでそのままの感想を口にした。先輩はそこで、「そうなんだよ、ベランダで飲むときちょうどいいんだよこのグラスは!」と顔を綻ばせた。

うちの家にはベランダは無いんだよなぁ、と思った瞬間、夢は終わった。

強い風にあおられた雨粒が、バラバラと音を立てて窓ガラスや壁にぶつかる音が聞こえた。