喫茶店に着くと、指定された時間より早かったにも関わらず彼女は先に来ていた。
学生時代から密かに恋心を抱いていたが、良き相談相手という肩書きから脱出できずに今に至る。
「遅れてごめん」と僕はイスを引きながら声をかける。実際には遅刻はしていないけど。
正面に座っている彼女が僕を見る。僕は彼女の目を見る。
その瞬間、例えば"運転中に余所見をしてしまってぶつかってしまった相手がパトカーだった"時のような「あ、終わった」という直感があった。
彼女は顔を赤らめながら、おそらく生涯の伴侶になるであろう男性について話し始めた。
僕は相槌を打ちながら、「祝うと呪うはなんで漢字が似てるのかな」なんて考えていた。
心の上に秋を見つけてしまった。