「行く川の流れは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。」方丈記より〜
夜に空を見上げると、積雲(一般的に言うワタ雲)が出来損ないのワタアメみたいに連なってゆっくりと密やかに移動していた。
僕は少し酔った頭を、冷たい空気にさらして佇む。半乾きの髪が夜になじんでいく。
次の日の夕方に外に出てみると、東には厚めの雲が、西の山々には散らばった雲が浮かんでいる。傾きかけた西日が雲に隠れ、後光が差したような神々しい彩りをつくる。
僕はその瞬間に立ち会えたことを誇らしく思う。写真を撮ろうかと思ったがあいにく手ぶらだった。
同じ形の雲は二度と存在しないし、それが太陽や月や星や風とともに描くキャンパスは一分一秒ごとに違う。
つまり僕が美しいとか壮大だとかの感想を述べようが述べまいが絵は描かれ続けるし、
これからも僕が生きていようが生きていまいが、彼らには全く関係のないことなのだ。
そう考えると僕はひたすら寂しい気持ちになる。
僕の存在は大きな川に浮かぶ、うたかたと同じ。