HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

夏と秋のジレンマ

日中は蝉の声が、夜はコオロギ達の声が一日二回公演のように合唱している。陽射しはまだ強いが、湿度が少し下がり、空が高く青が蒼に変わり始めたそんなちょっぴり寂しい気配の午前十時過ぎ。


僕はつい先日子供が産まれたという地元の友人宅を訪れるためにジリジリとした暑さの中を歩いていた。三十年近く前に住んでいた三棟並びの借家の横を通り過ぎながら、三輪車で駆け回っていた頃を思い出しノスタルジックな気持ちになった。この借家に住んでいたのは確か一年くらいで、すぐ近くだが両親は持ち家に引っ越した。僕が五歳の頃だ。


あの頃や、小学生時代は約束なんてしなくても友達と遊べた。放課後に「んじゃ今日は○○の家」だとか、アポ無しで行っても何も問題は無かった。


中学になると、部活に追われ遊べるのは週末だけになったり、進路が決まっている間柄だけで、なんて感じになった。


高校以降、各々の忙しなさはさらに加速する。バイトだったり就活だったり大学受験だったり。年に数回長期休暇だけに制限される。


社会に出れば人間関係は複雑になり、年に一度会うか年賀状だけのやり取りになるか、そんなところだ。不思議と、携帯電話が普及し相手の連絡先はアドレス帳に入っているのに連絡を取るのは敬遠しがちになる。


何年後かに"偶然の再会"という出来事も多くなるだろう。


年をとるにつれ「毎日」が「毎週」になり「毎年」になりどんどん期間は長くなっていく。『一か月が過ぎるのが早い』とか『もう今年も三分の二が終わるんだ』なんて台詞が頻繁に飛び交う。


大人になるというのはこういうことなのだろうか。夏の終わりはいつだって寂しいというのに。