コイントスで決めよう。
親指の上にコインを載せて、弾きあげる。
1メートルほど真上に飛ぶコイン。
落ちてくるところを、左手の甲と右手の平でキャッチ。
深呼吸をして、右手をよける。
その時思う、「どっちがオモテだっけ?」
気を取り直して、数字が書いてある方がウラ、絵が描いてある方をオモテ、と決める。
もう一度、親指でコインを弾きあげる。
再び1メートルほど真上に飛ぶコイン。
しかし、キャッチする右手の所作がコンマ何秒か狂い、
バレーのスパイクよろしくあらぬ方向へコインを叩き飛ばしてしまう。
勢いよく床に叩きつけられ、転がるコイン。
運悪くベッドの下へ行き、フィギュアスケートの選手みたいにくるくると回転し、チャリンッと倒れる。
膝をついて覗きこみ、狭い隙間に懸命に腕をのばす。
顔はコインがある方向とは逆を向き、指先の感覚だけで探す。
薬指に触れたコインを、床に擦りつけるように移動させ、掴みとる。
コインに付いたホコリをフッと吹き飛ばし、見つめる。
もう、何を決めようとしていたのかも忘れてしまった。
諦めてコインを枕元に置き、部屋の灯りを消して布団に潜る。
良い夢が見れるといいが、果たして。
君は今夜、どんな夢を見るのだろう。