男はコンビニへ行く。
長い残業を終えて、もはや帰ってから自炊する精神力はなくなっている。
いつもこの季節に限定発売される缶ビールと、適当なツマミで済ませてしまおうという算段だ。
閑静な住宅街、よりは"ただの田舎"と呼ばれるであろう自宅近くのコンビニへ寄る。
バス経路沿いとはいえ、車の行き来もこの時間はほとんどない。
駐車場には車が3台。客を待つタクシーが1台、タバコの自販機の前に停まっている。
店内に入り、グラビア雑誌の表紙を眺めながら冷蔵庫の前へ。
350ml缶のビールを2本取り、扉をバタンッと閉める。
パンの前で明日の朝食用の菓子パンを選んでいる女性が一人。
その後ろをすり抜けながら惣菜コーナーへ行き、スティック状のチーズとレンジで温めるだけの唐揚げを手に取る。
レジへ向かうと、奥の扉から店員がやってくる。
「温めますかー」と聞かれ、一瞬悩んで「はい」と答える。
釣銭を受け取り、ビールとチーズの入った袋と、唐揚げが入ったレジ袋の2つを提げて家へと向かう。
ふと、駐車場に停まってた車の数と、店内にいた客の数が合わないことを不思議に思ったが、
「どうせ近所の心無い連中の駐車場代わりに使われてるんだろうな」と自己解決した。
月が雲間から顔を出して、夜道が少し明るくなる。