HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

吸血鬼との対話・後編

『は?アンタ、何者だ?』

「わたしがヴァンパイアだ。」

『何をバカな。大体にして、アンタの方から”ヴァンパイアにインタビューをお願いしたい”って連絡よこしたんじゃないか。』

「”私が、君に”インタビューするんじゃない。”君が、私に”インタビューする予定だったんだよ。途中、実際その傾向もあっただろう。会ったその瞬間に、私の正体を見抜けなかったのは運が悪かったな。」

『オレのこの顔は!?これまでの女たちはどうするんだ!?』

「まず、普通のヴァンパイアは、”インタビューがあるから”って、ほいほい人間と接触したりしない。君は行動が軽々しい。
第二に、君のその目は、ただの炎症だ。放っておくと失明にまで至る。明日にでも眼科に行ってみるといい。ああ、ついでに精神科にもな。君は成育過程で矯正を怠った歯並びの悪い、角膜炎持ちのただの人間だ。
女性の血をすすったからといって、ヴァンパイアなワケじゃない。君は同属を殺しただけ、一般的に言う殺人鬼でしかない。いささか性欲に偏向はあるがね。
君が殺った女性らには気の毒だが、私には人間界でどう人が死のうと関係のないことだ。
そして、君の発言は全くヴァンパイアを理解していない。
”人間の文化に頼らなくちゃダメだ”なんて、我々ヴァンパイア達に失礼極まる。ヴァンパイア界にはれっきとした、崇高な文化と社会が成立しているんだ。
”ヴァンパイアの吸血は人間のセックスと同じ”だって?ナメるんじゃない。
最上の相手の生き血を口にするまでは、あらゆる過程を我慢する。
”生き血自体”が活力なんじゃない、口にするまでの、人間的に言えば”努力”とか”忍耐”こそが活力なんだよ。そうやすやすと、手当たり次第に口にするモンじゃあないんだ。
君のヴァンパイアとしてのこの発言は、全て妄想に過ぎない。


黙ってて悪かったが、私は、君のような”自称ヴァンパイア”に会い、面接し、存在を精査するためにここに来た。ヴァンパイア界に君のような非純潔な輩が紛れ込んでくるのを防ぐために命令を受けている。君はヴァンパイアの素質はなさそうだ。上に今日の報告をすれば、即座に君をこの世から抹消することだってたやすい。君の存在価値は人間界にももうないんだろう?。死なずに済んでもブタ箱行き、無期限保証付きでな。」

『!!!オレはヴァンパイアだ!ヴァンパイアなんだよ!!』

「違うね。君には全く”誇り”というものがない。」

『オレまだ死にたくねぇんだよ、頼む、見逃してくれよ、ちょっと調子にのってみただけなんだよ!!』

「見苦しいな。もし生まれ変わりを信じているなら、次こそはわたしに害の無い存在でいてくれたまえ。」

『!・・・』





「奴は肉体的な素質はまだあったが、精神的には全く問題外だ。
これでまた、人間界でもヴァンパイア界でも生きられないどっちつかずな蝙蝠野郎が、またわたしの周りをウロチョロ飛び回る。
この調子で新ヴァンパイアが現れないとなると、ヴァンパイア界も廃れていく一方だ。何とかしなくては。
面接の後は疲れが溜まるな。ひとまず、彼女に逢いに行ってから、報告書をまとめよう。
今の彼女にいっそ咬みついてしまえたら楽になるんだろうが、やhり”我慢”するのもまた楽しい。
まぁ、我慢してるのか焦らされているのかは判然としないがね。」