HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

晴れた日曜日の午前に、良い午後を過ごせそうな予感

電車に乗る時は、まず座って本を読みたい派。ボックス席の奥だろうと、女子高生の隣だろうと、座る。荷物を置いて二人分の座席を優雅に使っている人には、荷物をどけさせて、座る。





今日は生憎、座る席が無かった。ちょうど綺麗に席の分だけ埋まっている電車に乗り込み、乗り込んだ人数分だけ立っている。立ったまま壁によりかかり、本を読み始める事にした。
駅を出て橋にさしかかる頃、大学生だろうか私服から職業までは量れないが、若い男の子が2人立ち上がった。「お、次の駅で降りるのかな」と思って、空いた"彼らの席"をちらりと横目で見る。
と、彼らはさっきの駅で乗ってきた初老の女性に近づき、"彼らの席"に座るよう促した。


彼らが"2人"だったからできたことかもしれない。また、その女性が頑なに着席を拒む可能性だってある。(現在の日本には、この傾向も多々あり、これが若い世代が席を譲ろうとしない一つの原因でもある)


が、僕は素直に感心した。その女性は礼をいいながら安心したように"彼等の席"に座った。

さて、席を立ったのは2人で、座った女性は1人。1席空いている。本来ならば、是が非でも席に座りたい願望を持っている者としては格好のチャンスなのだが。
一部始終を横目でとはいえ見ていた僕には、"彼等の席"に座る選択の余地はなかった。彼等の気持ちに水を差してしまうだろうと。そしてそんな野暮な行為は自分は嫌だと。


1つ目の駅では誰も乗ってこず、"彼等の席"は1つ空いたまま。その間も活字を追うことに専念。横目では見えているが。
次の駅で40代位の女性が乗ってきた。入り口近くにある"彼等の席"に座る。そこはその時から"彼等の席"ではなくなった。ホッと胸をなでおろす。何を心配していたわけでもなく、同乗していたとはいえ無関係ではあったが、その時ようやく彼等の気持ちが全うされたような気分だった。


終点駅につき、みんなが降り始める。彼等も、さっきの席に座っていた2人の女性も。他の席の客たちも次々に降りていく。
彼等の顔は全く印象に残っておらず、駅のホームの雑踏に溶け消えていく。次に見かけたとしても、繁華街で酔って絡んできたとしても、全く今日の出来事は思い出されないだろう。




ただ、今日という晴れた日曜日の午前に、良い午後を過ごせそうな予感をもたらしてくれた行動は僕の中に残っている。多分明日の電車の中でも思い出し、また良い一日を過ごせる予感を与えてくれるだろう。