HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

ノーライセンス・ドリーム

寝間着に突っかけを履いたまま、家の駐車場でウトウトとしていた。

春の陽射しが車内を温めている。朝だというのに暑いくらいだ。

妻と息子が家から出てきた。当然のように妻は助手席へ、息子は運転席へ座りキーを差し込む。

うつらうつらとしていた僕は、着替えの提案もできないまま、流れに身を任せている。

エンジンがかかり、慎重なモーションで発車した。

ん?僕の記憶が確かならば息子はまだ中学生だ。免許を取る年齢に達していない。にも関わらず母親公認で車を動かしているのはなぜだろう。もう何度も運転しているのか。

また少し眠っていたようだ。後部座席からフロントガラスを眺めると、充分な車間距離と法定速度を順守したスピードで車は東へ、つまり海へ向かっているようだった。

免許取りたての初心者マークを貼ったようなある意味安心できる運転だった(そもそも無免許なのだが)。運転に慣れて気が大きくなっているドライバーよりはだいぶマシだ。

途中、小さな古い商店街に通りがかり、車は小さな赤い橋の手前に停まった。駐車した向かいには甘味処があり、商店街主催のささやかな祭りでもあるのだろうか子どもたちを中心とした群がりがあった。

カキ氷と和菓子を店の前で売っていた。僕と妻と息子は、古いカキ氷機を動かしている店の女主人とそれを取り囲む子どもたち、その一部となった。

海へと続く商店街の先を見やる。このまま息子の無免許運転で行くのだろうか。何もしゃべらない妻に僕はそれを指摘すべきだろうか。

考えようとしても口を開こうとしても、微睡みの中に再び僕は潜っていく。