HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

DAY BY DAY「3」

帰り道もまた、娘と手を繋いだ。まだ遊び足りなさそうだったけど、今日はちょっと我慢してもらおう。

街路樹の枝には葉が一枚も残っていない。これは冬に太陽の陽射しを届きやすくするためなんだ、って昔誰かが言っていた。

おかげで小春日和の暖かさを束の間ながら享受できる。夕方の帰宅ラッシュになる前の車線は、渋滞はしていないが速度は緩やかになってきている。

ふと、名前を呼ばれた気がして、あたりを見回す。行きかう車の雑踏だったのか、ただの気のせいだったのか。そう言えば、最近名前で呼ばれてないなぁ。

夕飯の献立を考えながら歩いていたら、また名前を呼ばれた。今度ははっきりと聞きとれた。

信号待ちで止まっている対向車線の運転席の窓を開け、大きく手を振っている男がいた。

久しぶりに見た、八重歯むき出しの笑顔。最後に見たのはだいぶ昔のように思える。その仕草を目で追っているうちに信号が変わり車は走り出した。

「いまのだぁれーー?」と娘が袖を引いた。

fin.