HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

トゥエンティー・イヤーズ・アゴー

二十年前、高校入学を決めた僕は学校の「推薦」枠を勧められた。

今と昔では受験の方法や順番が違うらしい。当時は「特待」「推薦」「一般入試」だった。

推薦入試では筆記テストの他、面接と作文があった。作文の題材は"十年後の私"というものだった。

そのころ好きだったマンガは「るろうに剣心」で、元新選組三番隊組長斎藤一緋村剣心と十年ぶりに相見えるシーンで「十年か…人が腐るには云々」のセリフが頭から離れず、出来上がりは酷いものだったと思う。

学校側としては"学生生活で培ったものを将来どう生かすか"とか"未来の自分の確固たるイメージ"などという文章を望んでいたのだろうが、そんなことは分かる由もない。

かくして、面接の態度か作文の出来栄えなのか内申の内容なのか理由はわからないが、「推薦」で入学はできなかった。

私立の滑り止めを受け、推薦がまかり通らなかった公立校をもう一度指定して一般入試を受ける。

無事志望校入学を決めた僕は、中学を卒業した。

「十年後の自分」について作文すら書けなかった中学三年生の僕は夢にも思うまい。
「次にこの学校に来るのは、ちょうど二十年後」だとは。

二十年前に僕が着ていたのと同じデザインの制服に身を包んだ我が子の"保護者"として母校の門を通る。

今年は桜が満開だ。