HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

郵便局員の彼と服屋の私

付き合って数年が経つ。だからお互いの生活のサイクルもだいぶわかっている。

年末が近づき、彼は年賀状販売のノルマをこなすのに大忙し。私はクリスマス商戦の真っ最中。

もう少しすると、今までジョギング気味だったティーチャーも猛ダッシュするほどの忙しない年末。どうしてこうも全てを年内に終えなければならないような雰囲気につつまれるのだろう。

世間がカウントダウンや初詣など正月休みを堪能し始めるころ、彼は朝早くから「今年もよろしく」と書かれた葉書を配りまくる。公務ではない、企業の一大事業の歯車として。私は私で、初売という盛大な世間のイベントに歯車として組み込まれる。中身も分からないのにお得感だけで満足していくお客さまたちのために、せっせと福袋をつくる。

というわけで、同棲していない私たちのこの時期はただ眠るためにそれぞれの家へ帰る日々が続く。当然ながらクリスマスで浮かれるムードもオーラもチキンもケーキもローストビーフもない。まともなデートさえ難しい。

かろうじて、私の休憩時間と彼のお昼休みが重なって時間ができた。一時間だけだけど。私の職場近くの喫茶店で待ち合わせる。サンドイッチを食べ、コーヒーを飲み、他愛ない会話を交わす。そして時間はあっという間に過ぎる。まるでスヌーズ機能をセットした目覚ましのアラームとアラームのあいだの時間のように。

彼が伝票を持って席を立つ。

「ちょっくら仕事行ってくる」と軽い感じで戦場へ赴く。私も自分の戦場へ戻る。

もう年内に顔を合わせられる機会はないかもしれない。もしかしたら「メリークリスマス」と「良いお年を」を言うラストチャンスだったかも。

あぁ、キスもし忘れた。