ここ一週間くらいのこと。
3月の半ばに国分町へ繰り出したところ、某居酒屋での会計の際、貯めに貯めていたポイントカードがなくなっていることに気付いた。
カード入れになく、カバンをひっくり返してみてもなく、泣く泣くポイントを諦めた。
翌日、シラフの状態でもう一度検めたが、やはりなかった。
そして先週、年度末と月末と週末が重なった土曜日、またも国分町へ繰り出し、陽気な酒をハシゴした。
呑みの帰りはほぼ同じ場所からなるべく同じ会社(地元近くに本社があり、これもまたポイントを貯めている)を選んでタクシーに乗っているのだが、酔った思考回路は当然それに倣っていた。
運転手に目的地を伝え、道筋を教え、半ばウトウトしていると「お客さん、この辺でいいですか?」と声をかけられる。
どうやらウトウトどころではなかったようだ。窓から外を見渡すと家の近くの道路で、舗装されていない私道への曲がり角の手前だった。私道は行き止まりになっていて、突き当たりに家があるためいつも私道の手前で降りている。今夜はピシャリの場所だった。
『ここでいいです』とポケットからカード入れと金を取り出そうとしていると、「あ〜、やっぱりお客さんですか!」と支払いより早く運転手が話し出した。
彼の手には黄色い、某居酒屋のカードがあった。
運転手の話では、前回(といっても同じ号車を選んでいるつもりはないのだが)乗車した際、支払い時に間違ってカードを出し、そのまま車内に落としていたようだ。
降車地点でハッと気がつき、声をかけてくれたらしい。
場所や時間帯が近かったのはあるだろうが、毎日のように様々な人間を様々な場所へ送り届けているというのに、以前に乗った客を覚えていられるというのはなんとも素晴しいことであり、感謝と同時に「世の中まだまだ明るいな」と思った。
実際、空は白みはじめていたが。
さらにその翌週、呑んで同じ会社のタクシーに乗り、案の定ウトウトどころではなくなり、車が止まった場所は家から数メーター分行き過ぎてしまった地点だった。
渋々料金を支払い、嵐が近づいている雨降る夜道を徒歩で傘もささずに戻った。