「ウスバカゲロウ、って知ってるか?」
『薄馬鹿下郎?なんだその罵詈雑言は』
「変換文節が違うよ、薄羽蜉蝣。虫だよ、ほら、夏の終わりに広瀬橋にブワァーっと死んでるやつ」
『ああ、タイヤがスリップしそうになるやつな。ちなみに広瀬橋って"日本初の鉄筋コンクリート製"だって知ってたか?』
「知ってるよ。看板に書いてあんじゃん」
『で、そのウスバカゲロウがどうしたんだ』
「なんで一夜にまとまってああいう現象になるのか不思議だったから、こないだウィキってみたんだよ」
『"ウィキって"ってなんだ?』
「"wikipedia"で調べる、ってことだよ。googleで検索する事を"ググる"って言うのと同じ」
『ハイテクだな。ローセンスだけど』
「でもさ、wikipeiaには大量発生、死亡することはなんも書かれてなかったんだ。ただ、ウスバカゲロウの幼虫がアリジゴクだってことは初めて知った」
『だいたい、今の世の中はなんでもかんでもwikipediaに頼りすぎなんだよ。あんなの、登録してログインすれば誰でも書き込みできんじゃん』
「幼虫時代は"蟻地獄"なんてゴツい名前なのに、成虫したら"薄羽蜉蝣"だなんて、なんだかなーと思っちゃってさ」
『儚ぇな』
「昔の人は"陽炎"のように儚いから"カゲロウ"なんて名前をつけたんだろうなぁ」
『昔の人ってネーミングセンスあるよな。"亀頭"とかな』
「海沿いの人がつけたんだろうな」
『カメ見たことないと付けられないもんな。"あれ、コレ亀の頭に形似てね?"なんて言ってたんだろうな』
以上のようなやり取りを考えていると、雨の中を原チャで帰るのも時間が経つのは早い。