「こないだね、駅前にいたら"生まれ変わったら、鳥と魚のどちらになりたいですか?"ってアンケートしてる人に聞かれたの。一瞬、なんかの宗教の勧誘かと思って身構えちゃった。」
『そんなアンケートあるんだ。大学の卒論かなんかなのかな』
「そうみたい。けっこう若くて、でも引っ込み思案な印象のコだった。でも街頭アンケートするくらいだから行動力はあるのかも」
『で、君は何て答えたの?』
「その時はね、答えられなかった。"生まれ変わる"なんて常日頃から意識してることじゃないし、もし私が死んだら〜なんて考え始めたら気分暗くなってきちゃって。」
『まぁ、"あなたは犬好きですか猫好きですか?"みたいな質問とはちょっと違うしなぁ。で、出た答えは"魚"か?』
「そう。やっぱわかる?」
『なんとなくね。水のイメージが。』
「自分に翼が生えてるのと、尾ひれがついて泳ぐのとを想像すると、やっぱり魚なのよね。でも、泳いでる場所は川でも海でも水槽の中でもどこでもいいかな。あなたは?」
『選択肢が鳥か魚かしかないんなら、鳥かなー。あんまり自力で羽ばたきまくるんじゃなくて、悠然と風に巧く乗って飛びたい』
「私は水に揺蕩う魚、あなたは空飛ぶ鳥。来世じゃ出逢えなさそうね」
彼女は皮肉りながら席を立った。
『世界中を飛び回ってでも君を探し出すよ』などと言えるキャラでもないし、どうしたものか。
コーヒーの最後の一口を飲み干し、頬杖をついて目を閉じてみる。
川のせせらぎが見えるテラスの席に、時間だけが過ぎていく。