女はコンビニにいた。
飲み会の帰り、喉が渇いたのでジュースでも買おうとタクシーを降りた。
職場が違うとはいえ久々に会う友人たちとの食事は楽しく、昔みたドラマの場面を思い出した。
閑静な住宅街、よりは"ただの田舎"と揶揄されるこの町に住み始めてから三年経つ。
バス経路沿いとはいえ、車の行き来もこの時間はほとんどない。
遅くまで飲んでたのも悪いけど、夜道は怖いのでタクシーには待ってもらっている。
店内に入り、ファッション誌のモデルの可愛さにため息をつく。
ジュースはやめて緑茶にして、ついでに朝のパンも。
ドアが開いて、スーツ姿の男性が店に入ってきた。
どこかで見かけたような顔の気がした。まっすぐ冷蔵庫の前に行き、ビールを取って私の後ろを通り過ぎる。
彼に気を取られて、パンを選ぶのを忘れていた。
「菓子パンのカロリーやばくない?」って友人が言ってた。
パンはやめてヨーグルトだけにして、レジで待つ。さっきの彼がレジ袋を提げて出口へと向かう。
待っててもらったタクシーに乗り込む。店で後ろを通り過ぎられた時に、さっきの彼が誰か分かった。
疲れた顔で戸惑ったけど、あの香水は昔私が選んであげたのと一緒。なんだ、この辺に住んでたんだ。
一方的な偶然の再会に、気分が何だか明るくなる。