雨上がりの朝。
玄関先で濡れた地面をぼーっと眺めながら煙草をふかしていた。
交尾中の赤トンボが、水たまりの近くを飛んでいる。
高度を下げ、メスが尻尾をチョン、チョンと水たまりにつけた。
「その水に卵を産み付けても、ヤゴは生きていけないよ」と危うく声をかけそうになる。
それにしても、なんて美しいホバリングだろう。
たしかトンボの飛翔メカニズムが解明されて応用できれば、ものすごい事になるんだとかなんとか。
何がどう凄くなるのかは忘れてしまったけど。
赤トンボの夫婦は、三、四度チョン、チョン、と産卵し、どこかへ飛んで行ってしまった。
秋が終わろうとしている。