HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

MURDER

ブラックな小話を。フィクション?です。

電車の中。内気なおじいさんが乗車してきた。3年前に病気を患い、ペースメーカーを入れていた。
優先席付近に女子学生が3人。かろうじて席は空いていたので気後れしながらも座る。マナーなんてド無視の彼女たちは、「ウッソー!?マじで?」などと喋りながら携帯をいじくる。彼氏からの電話に夢中。内気なおじいさんは無論自分の体内に医療器械が入っているなんて言えるはずもない。誰も知らない。
突然、おじいさんが前のめりに倒れた。駅に着くまもなく電車はストップ。車掌が「どなたかお医者様はいらっしゃりませんか?」とアナウンスする。映画や作り話なんかに出てくるお馴染みのシーンが目の前で起こり、彼女たちは唖然としながらただ見ているだけ。稀有な体験にメールで友達に報告するのもいる。

救急車が着き、おじいさんは搬送される。病院に着くのを待たずして息を引き取ってしまった。

次の日の朝、学校に着いた3人は昨日あった出来事を半ば自慢げにクラスメイトにお喋りしている。もちろん亡くなってしまった情報など届くはずもなく、何も知らない。

おじいさんの位牌の前で40年連れ添ったおばあさんが突っ伏して泣いている。




殺意の無い完全犯罪。