HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

10年⑦

オレが函館に行った年、親友には第一子が生まれていた。

ヤツが組んでいたバンドの活動が、アマチュアながら本格的になっている。スタッフというかアンケート配りというかからオレのサポートが始まった。
バイトをし、休みに融通がきいたので、休みの日はライブに行き手伝った。仙台だけでなく県外までも広がった。手始めに東北南方、秋田、真冬の新潟&長野、東京、大阪、札幌、旭川など。冬の道をチェーンなしで走ったり、東京という狭い道でビビったり。電気もガスもない知人の住んでいない家屋を借りて1週間すごした事もあった。大概は車中泊で通した。色んなことがあったなぁ。
奴らとはほとんど毎日同じ時を過ごした。
そうして2年ほど経った頃、彼らの活動がいよいよ全国クラスになるようだった。
ちょうどオレが仕事でバイトから社員扱いに変わる頃と同じくらいだったので、簡単に手伝ったりする事はできなかった。ましてや全国クラスになっていく中で周囲も本格的なサポートができる人間が必要だろう。岐路に立っていた。


特に何が変わる事もなかった。
そう、しょっちゅう一緒にいるから友達だというわけでも、ほとんど会わないからもう友達じゃないというわけでもない。
会えば色々喋ることはあるし、酒を酌みながら語り合うタネもまだまだある。お互い自分の家族を持ち、仕事をし、父親として、夫として、責任と時間の不自由はある。
だが、何も変わっちゃいない。そう思えるようになったからこそ、10年近くの付き合いにして「親友」と呼べるだろうと確信した。

ようやくヤツも酒に楽しみを覚えてきたことだから、お互いの好きな、思い出を抱えた曲を持ち寄って宅飲みでもするか。
シリーズ「10年」、END。