皿を洗って、布巾で拭き、食器棚に戻す。地味な家事に見えて後回しにしてしまいがち。趣味で料理を始めたばかりの頃は、料理を作って食べたら終わり、で止まってしまっていた。
家にしろ車にしろプラモデルにしろ、何かを作るというのは類似点が多い。
例えば音楽と料理。
譜面とレシピ。
声や楽器と肉や野菜。
万人ウケするポップソングとお茶漬け。
ハードコアパンクと激辛料理。
クラシックと懐石料理。
田舎の郷土料理と民謡。
ヒットチャートを席巻するインスタント食品。
フライパンとドラム。
包丁とギター。
Fコードの押さえ方とかつら剥き。
メロディーと味付け。
ドレミの音階と調味料の”さしすせそ”。
A add9とガーリック。
こだわりのあるCDジャケットと器の盛り方の美しさ。
聴く人と食べる人。
ミュージシャンとコック。
皿洗いをするようになったのは、ふだん趣味程度にしか料理をしない、生活時間のズレ、などからくる気不味さを些細な家事で補おうとする自己満足。
だけど、タイガーモス号の汚れたキッチンスペースを片づけてから料理に取り掛かる少女シータの場面を想い出してほしい。キッチンやシンクがきれいなら、次に料理をするときのモチベーションが違ってくるだろう。
たとえ料理をする人間が自分ではなくても、皿洗いをしたり換気扇フィルターの油汚れを重曹で落としたりする。
これはなんとなくライブハウスという職場に似ているな、とスポンジで洗剤をクシュクシュ泡立てながら思う。