HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

可能性大

雪の積もった真っ白な道を、彼が運転する車でドライブ。


空はうっすらと雲がかかっているけれど、陽射しが雪に反射してキラキラまぶしい。


お腹が空くまで目的地を決めずにひたすら走る、私たちのデート方法の一つ。


ちょっと大きめのT字路の手前で、彼はおもむろに車を路肩に寄せて停める。


後続車が数台、私たちを追い越して行く。



「アノキノヨドオ」


彼が意味不明の言葉を呟いた。


先に弁明しておくと、彼はアタマがおかしいわけじゃない。

いたって普通の会社員。無口で人見知りな所があるので、初対面の人には「暗い人?」と思われる可能性大。

ただ、ある程度顔見知りになっちゃうと、さっきみたいな発言をしちゃう。だから、私の友人たちからは「ちょっとイカれてる?」と裏で言われてる可能性大。




「アイッノッキンノッヨッドォ」


これまた抑揚がついただけで意味不明。


『なに???』と聞き返す私。


「I'm knockin' your door〜」


今度はメロディーがついた。私は溜め息をついた。


そして「左かな」と答える。私がその歌知らなかったらどうしたんだろ。


彼はギアをドライブに入れ、ウインカーを出して再び車を走らせる。



"この先の道をどっちに行こうか?"なんて会話をするだけなのに、こんなに回りくどくてオヤジギャグにもならないレベルの発言をしてくるなんて。


初めて出会ったときは『無口でちょっとクールっぽいかも』なんて思っちゃった私がバカ。


でも何回か会ううちに惹かれてしまっていた。


気付いたら自分から『お付き合いしてください』って言ってた。



思い返せば、わりと大事なポイントでリードしていたのは私。


こんなんじゃ、将来"カカア天下"になる可能性大。


そんな事を考えながら彼に目をやる。この横顔、見飽きないんだな、なぜか。



信号が赤に変わり、車がゆっくり停まる。


(そろそろお腹すいたな〜、ハンバーグとか洋風な気分だけど昨日テレビでカレー特集やってたからそっちも捨てがたいな〜)なんて考えていた。


信号が青に変わり、車が走り出す。


「メシ何にする?」


今度はフツーに聞いてくるのか。今絶賛迷い中なのに。


「ここでいい?」ファミレスの前で言う彼。


こうなってくるとますますカレーが捨てがたくなってくるんだけれど、まぁ二択の片っぽだったからいいや。


『いいよー。』ちょっとふてくされ気味に返事をする。


席に案内されてメニューを見ながら、(とは言え私はハンバーグのソースを選んでるだけだけど)『何にする?』と聞くと、


「オレは、カレー」とちょっとニヤッとしながら彼は答えた。



私の思考が全て読まれてる可能性、大。