HAPPY! I SCREAM

妄想雑記

愚か者と神の声

駅を降りて深夜までやっている(というか24時間営業)のスーパーへ向かう。晩飯が無いのだ。


声が聞こえる。
『お前の望みはなんだ』
「え〜とですね、暖かい部屋に行って酒が飲みたいです」
『今はどこへ向かっている?』
「スーパーです。」
『何を買うつもりだ?』
「ツマミと酒ですかね」
『スーパーへ行く元々の動機は、"晩飯が無い"ではなかったのか。』
「そうなんですけど、まぁたいして空腹!ってほどでもないし、何かは食いますけど。炭水化物に酒ってのもちょっと。」
『ふむ。メシよりも酒、というわけか。そんなんでいいのか?』
「はい。ストックもないし、どうしても今すごく飲みたいんです。食欲も性欲も睡眠欲よりも、酒が今飲みたいんです。」




スーパーへ着く。カゴを手に"鮮魚"から"精肉"を通り"惣菜"へ。一通り眺めたところで、"精肉"にて砂肝の燻製を2つカゴへ。"鮮魚"へ戻り、メバチか北海タコか迷い、グラムあたりの僅かな安さでタコをカゴへ。酒売り場で焼酎をカゴへ。
たんぱく質ばかりだな」と思い、"惣菜"へ。100円くらいをメドに、小松菜のゴマ和えをチョイス。


家へ着き、タコをスライス。皿と箸と買って来たものを並べる。製氷皿から氷をグラスにいれ、焼酎を注いでテレビをつける。特筆すべき番組はない。小松菜が思いのほかしょっぱい。喉が渇くので焼酎を飲む。ペースが普段より幾分か早くなる。箸を持つ手の、皿と口の往復スピードもやや早い。テーブルの上のツマミがなくなる。2杯目の焼酎を注ぎにキッチンへ向かう。先ほどのものと同じか分からないが、声が聞こえる。

『その足元の袋を開けてみなよ。何が入っているかはオマエも知っているんだろ』

もちろん、この間自分で買って来たものだから、何が入っているかは十分承知している。

コンマ何秒か思いとどまったが、すぐに袋を開け、中の一つを取り出す。焼酎とともに戻る。パリパリボリボリ。ボリボリボリボリ。ゴクン。ある種の禁断を破ったような幸せを感じる。パリパリボリボリ。ゴクン。ボリボリ、ゴクン。



外で聞こえた声がする。
『おい、"炭水化物と酒はちょっと"、なんて言っていなかったか?なんだそれは』
「カロリー表示は372kcalだし、半分食ってやめますよ。」
『なんと意志の弱いことだ。今までにそれで後悔した朝を何度迎えている?あの腹部の張りと、むくみを忘れたのか』
「これでもちょっと迷ったんですけどね、さっきは引っ込んでいた食欲が戻りつつあったんで。」
『・・・』
「最高ですよ、チキンラーメンをボリボリ食いながら飲むの。」

空になった袋をゴミ箱へ入れ、食器を下げて時計を見る。あと5時間で起床か。寝よう。




翌朝、というよりまだ陽も上りきっていない頃、激しい喉の渇きをおぼえて目が覚める。
洗面所で水をガブ飲みし、「この水でまた身体の新陳代謝が期待できるかな」などと思い、またフトンに入る。